【AI for Science試行録】第1回:研究課題の探索

Science Aidの鈴木です。隔週でAI for science情報を共有していこうと思ってます。

今回は、難しいタスクだとは思いつつ、研究課題を考える材料として、AIエージェントによる文献調査能力とアイデア提案能力を使ってみました。

AI for Scienceタスク

  • 「酸化ストレス」を対象とするドライ研究の新規課題候補を見つける。
    • 「酸化ストレス」は幅広い生物種に存在する仕組みで、研究量や研究領域が非常に多い分野。
    • 2025年の現在における、解決/未解決情報を改めて整理したい。
    • 上記を踏まえて、現在のドライ研究者はどこの領域を課題とすべきか、アイデアを調査したい。

使ったAIエージェント

今回のタスクでエージェントに求める能力

  • 先行研究の調査能力
  • イデアの提案力

AIエージェント使ってみた感想と知見(2025年7月13-18日)

  • 1週間弱の利用なのでまだ情報が浅いですが、それぞれのエージェントを使った感想を下記テーブルにまとめてみました。

AIエージェント比較表

Manus

項目 内容
長所 ・browser useに強い様子
・処理が早い
欠点 ・情報量が少なめ
・使用されたLLMや中間処理の詳細がわからない
・参考文献の不備が多い
期待するところ ・無料枠の増量
先行研究調査能力 ・参考情報程度に有用
イデア提案力 ・参考情報程度に有用

Falcon (futurehouse)

項目 内容
長所 ・projectsフォルダが便利
・出力情報が濃密
・タスク実行情報がリッチ
欠点 ・処理に少し時間がかかる
期待するところ OSS (Robin) も試したい
・Platformの処理速度の向上
・Projectsフォルダの使いやすさの向上
・今後のモデル(Finchなど)
先行研究調査能力 ・非常に有用
・幅広い観点に基づいた情報
イデア提案力 ・参考情報程度に有用

Biomni

項目 内容
長所 ・中間処理の詳細が明示
・オープンなSlackチャンネルあり
欠点 ・1回の入力タスクが多すぎるとエラーになる (20250718時点)
・Webアプリは承認が必要
期待するところ ・まだ使用できていないが、データ解析やデータベース活用関連のタスクに有用そう
OSSの有用性も検証したい
先行研究調査能力 ・かなり要約された情報
イデア提案力 ・シンプルだけど鋭い気がする
・幅広い提案
・提案のために様々なライフサイエンスデータベースへの検索調査をしてくれる

共通項

項目 内容
長所 ・ユーザーの入力に基づいたToDoタスクリストが生成される
先行研究調査能力 ・生成の根拠とされた参考文献が出力される
  • あくまで鈴木個人の意見なので、皆様の異論やご意見もぜひ教えてください!
  • 現状の感想を一言ずつまとめると、下記です。
    • falconは文献調査が得意そう。濃密な報告書が返ってくる。
    • Biomniは小さめタスクに分けて使う。中間処理の内容が明確なのがいい。
    • Manusは処理が非常に早い(その分、1回で返ってくる情報量は少なめ)。大きめのタスク(30行くらい)を一度に投げてもさくっとこなす。
  • 現状は3つを同時並行で使っていく形が便利そうだなと思いました。
  • 個人的には、根拠情報を辿るという意味合いでは、Biomniとfalconの使い勝手が良いと思っています。特にBiomniはタスク処理の内容が明確で辿りやすい点が便利でした。
  • 今後も使いながら情報更新していき、また共有したいと思います。(ChatGPT Agentも試したい)

できたこと

  • 「酸化ストレス」についての幅広い背景知識とトレンド情報の一部を得ることができた。
  • 「酸化ストレス」という幅広い研究分野の中の、注目領域の候補を効率的に収集できた
    • 下記が今回得られた注目領域の例:
      • 酸化ストレス vs 酸化ユーストレス
      • 活性酸素種によるエピジェネティック制御メカニズム
      • 極端な環境に住む生物における適応
      • 臨床表現型データと酸化ストレスマーカー
      • 進化的に保存されたレドックス制御モジュール
  • 注目領域における未解決問題候補を効率的に収集できた

まとめ

  • 得られた情報はあくまでアイデアや候補と考え、最終的には出力される参考文献などを詳しく読みながら自身の研究課題を詰めていく予定です。
  • とはいえ、研究分野の全体像をざっくりと把握する、という意味合いではAIエージェントは有用だと思いました。効率的な全体像の把握 > 論文を読む際の理解力の向上 > 訴求力のある研究計画作成、といった良いサイクルの原動力になるのではないかな、と思います。
  • 特に研究を始めたての段階、研究の方向性を少し変えてみようかなと考えている段階、の場合に有用かと思いました。

今後もテクノロジーをどのように研究に役立てるのか、地道に探っていこうと思います。 引き続きよろしくお願いいたします。