Science Aidの鈴木です。先日、Laboratory Automation Developers Conference 2025(LADEC 2025)に初参加してきました。
2日間の学会を通じて、ラボオートメーション(LA)を軸に、幅広いテーマの講演・ポスター発表・ワークショップなどが行われていました。
学会としては珍しく、派手な演出のオープニングセッションがあったり、序盤の講演でラボラトリーオートメーションの歴史や概要の説明があったりと、私のような実験自動化の初学者でも入り込みやすい構成でした。学びと刺激のある充実した時間を過ごせたように思います。
以下では、講演や交流、学会の雰囲気などを含め、印象に残ったポイントをいくつか振り返りたいと思います。
オープニング:ハイプ・サイクルを意識する
初日のオープニングでは、学会長の神田さんから「ハイプ・サイクル」に関するお話がありました。
これは、新しい技術やサービスが社会に浸透するまでの過程を示すもので、「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」の5つの段階に分けられるとのことでした。
これまであまり意識してこなかったのですが、このお話を聞き、自分が今どのフェーズにいるのかを意識しながら技術を使うことの重要性を感じました。
実験自動化研究の概要
私はライフサイエンス研究やAIエージェントには携わったことがあるのですが、実験自動化については知識があまりない状態で本学会に参加しました。
そんな初学者にも分かりやすいように、学会の最初に実験自動化研究領域の歴史や概要に関する講演があり、そのおかげでその後の発表内容がすっと頭に入ってきたように思います。
この2日間で、「まほろ」「DBTL」「SLAS」「FA」など、LA業界でよく使われる用語にも少しずつ馴染めてきました。今後、LA関連の論文を読んだり発表を聞いたりする際に役立ちそうです。
AIエージェント開発のリアルと課題感
日常的にAIエージェント開発に携わっていることもあり、本セッションは個人的に最も興味深い内容でした。
全体として、AIエージェント開発の実践者による「現場での気づき」を共有する発表が多く、非常に実用的で参考になりました。
Context管理、VerifierやRetry設計、マルチエージェント vs シングルエージェント、LLMとの言葉のやりとりの工夫など、「実際にAIを動かすときに考えるべきこと」が体系的に整理されており、多くの学びがありました。
最後のパネルディスカッションも含め、短い時間の中で多くの気づきを与えてくれるセッションでした。
バイオ一点物
「バイオ一点物」というセッション名の通り、ニッチなライフサイエンス分野における実験自動化をテーマとした発表が並びました。
バイオインフォマティクス研究に携わってきた身として、どの発表も共感できる部分が多く、特に印象に残ったセッションの1つです。
植物の乾燥ストレス研究、アリや非モデル生物を対象とした自動化研究など、個人的な関心にも通じる話題が多く、非常に勉強になりました。
自動化のコストと価値
発表を聞く中で特に印象に残ったのは、自動化におけるコストバランスの問題でした。自動化には時間や資金などのコストがかかるので、開発コストを上回る価値をいかに生み出すかが重要な論点として多くの発表で取り上げられていました。
一方で、実際に取り組んでみなければ自動化の効果が明確にならない部分も多く、それがLA研究開発の難しさでもあると感じました。
また、コスト面でいうと、資金力のある企業や研究室が積極的に自動化を進めることで、今後研究の格差が広がるいう話も出ていました。当然ではありますが、今後の研究の流れを考える上で、実験自動化は常に意識すべき重要な領域だと改めて感じました。
おわりに
発表の内容が非常に興味深いことはもちろんのこと、学会全体にフレンドリーな雰囲気があり、参加者同士の交流も活発で、密度の濃い2日間となりました。
今後もこの分野の技術やコミュニティに継続的に関わりながら、自分自身も貢献していければと感じました。